研究テーマ
現在、実世界(Physical System)に存在する様々な機器(例えば、家電製品、自動車、ロボットなど)は、内部に組込みシステム(Embedded System)と呼ばれる小さなコンピュータが組み込まれており、ネットワーク化された仮想世界(Cyber System)の強力なコンピュータと連携しながら、高度な制御や情報処理を行っています。このように、実世界と仮想世界が連携して高度なサービスを提供するシステムをサイバーフィジカルシステム(Cyber-Physical System)と呼びます。本研究室では、サイバーフィジカルシステムや組込みシステムの設計技術について、ハードウェアとソフトウェアの両面から研究しています。例えば、多数のCPUコア(メニーコア)による並列処理、バイオチップの設計自動化、IoTセキュリティ回路の設計自動化、高齢者見守りAI/IoTシステム、IoT/クラウド/SNS連携型カメラシステム、居眠り検出システム、ドローンの省エネルギー化、ドローンの自動飛行シミュレーションなどの研究に取り組んでいます。
組込みシステム/サイバーフィジカルシステム設計における数理最適化
数理最適化とは、数学/計算機科学の分野のひとつであり、ある制約のもとで最適な解を求める問題に関する学問です。本学科では3回生秋学期の「数理解析」で学習しています。学生の皆さんの身近な例では、「時間割が与えられたとき、最も卒業に近づくためには、どの科目を受講すべきか?」を考える問題は数理最適化問題の一つです。あるいは、「ある一定の交通費のもとで、最も短い時間で通学する経路を考える問題」、「自宅のキッチンと食材を使って、最も短時間で夕食を作る手順を考える問題」も数理最適化問題として捉えることができます。
本研究室では、組込みシステムやサイバーフィジカルシステムを設計する際の諸問題を数理最適化問題として捉え、数学的に最適な解を求めたり、最適に近い解を高速に求めるアルゴリズムを開発したりしています。具体的には、以下の問題に取り組んでいます。
マルチコア・タスクスケジューリング:処理すべき多数のタスクと複数のCPUコアが与えられたとき、処理時間を最短化するためには、タスクをどのような順番で、どのCPUコア上で処理すれば良いか?
ドローンによる荷物配送計画:配送すべき複数の荷物が与えられたとき、どのような順番で配送すれば、消費エネルギーが最小となるか?(または、配送時間が最短となるか?)
バイオチップ上での試料合成:所望の濃度の試料を合成する際、どのような手順で試薬の液滴とバッファ液滴の混合および分離を行えば、廃棄される試薬が最少となるか? 本研究は、情報理工学部の山下茂研究室との共同研究です。
本研究は工学的に価値があるだけでなく、多数の要因が絡み合った複雑な現実問題を解析・解決するメタな能力を身につけることが可能です。
スケーラブルなセキュリティを有するIoT回路の高位合成
サイバーフィジカルシステムやIoTに使用される組込みシステムは、フィールド(現場)に配置される性質上、サイドチャネル攻撃にさらされやすいという問題があります。ここでサイドチャネル攻撃とは、回路が消費する消費電力や回路から発生される電磁波などの情報(サイドチャネル情報)を観測し、統計処理を施すことにより、内部の秘密情報(例えば、暗号鍵)を取得する攻撃手法の総称です。一方、組込みシステムは多種多様であり、要求されるセキュリティレベルや、セキュリティ対策に許容されるコストが大きく異なります。本研究では、要求されるセキュリティレベルと許容されるコストに応じて、回路を自動的に生成する技術を開発しています。特に、Cプログラムから回路を自動生成する高位合成と呼ばれる技術と、誤差を許容することで低コストと高性能を両立する近似計算と呼ばれる技術をIoTセキュリティに活用します。本研究は、電気通信大学、福岡大学、東京工業大学、大阪大学との共同研究です。
スマートハウスを実現するIoT/クラウド/SNS連携システム
IoT(Internet-of-Things)とは、インターネットを用いてサイバーフィジカルシステムを実現する技術です。IoT技術により、 身の回りの様々なモノがインターネットに接続され、高度なサービスを実現することができます。 本研究室では、IoT、クラウドコンピューティング、および、ソーシャルメディアを連携させることにより、安全で快適な生活環境を実現する研究を行っています。具体的には、高齢者の見守り(転倒の検出)、不審者の検出などを行うシステムを開発しています。